朝日新聞×MITメディアのシンポジウムに行ってきた

先日、ジャーナリストでJCEJ(日本ジャーナリスト教育センター)の代表をやっている藤代裕之さんが講師をしてくださっている授業の一環で、朝日新聞とMITメディアラボのシンポジウム「メディアが未来にできること」に行ってきた。僕がTwitter上でハッシュタグをつけてtsudaってたアレです。

内容としては、①朝日新聞代表取締役社長の木村伊量氏の開会の辞、②MITシビック・メディア・センター・ディレクターのイーサン・ザッカーマン氏のプレゼン、③MITメディアラボ所長の伊藤穣一氏のプレゼン、④朝日新聞社デジタル事業本部長の西村陽一氏、朝日新聞社報道局ソーシャルメディアエディターの山田亜紀子氏、ザ・ハフィントン・ポスト・ライブのロイ・シーコフ代表、伊藤穣一氏によるパネルディスカッションという構成。

まずは木村社長の短い挨拶から始まったのだけど、ハンズフリーマイクで舞台を歩き回りながらプレゼンする姿はまるでTEDみたいだった。

「自分たちのメディアが揺らぐような時代がやってくるとは」「新聞社が求める人材も、取材方法も変わらなければいけない」「紙の新聞の良さを引き継ぎながら、デジタルという無限の可能性のある大海原にこぎだしたい」など、新聞社の社長としてはかなり踏み込んだ内容だな~と学生ごときが感動していたのだけど、どうやら社内では「おいおい言っちゃったよ!」みたいな感じでかなり衝撃が走っていたらしい。(先生談)

でも、これから日本のメディアが変わるかもしれないという静かな興奮に会場全体が包まれた、素晴らしいプレゼンだったと思う。

 

僕が一番面白いと思ったのは、4部のパネルディスカッションでの、ザ・ハフィントン・ポスト・ライブのロイ・シーコフ代表のお話。

米国のハフィントン・ポストでは、一度記事を書いてサイトにアップしたあと、読者から新しい情報とか良いコメントが入ってきたら、それを反映するために記事を一日に何度もアップデートすることがあるらしい。

これは従来の紙媒体ではできない、編集と配信が容易なデジタルメディアならではの手法だと思う。更に重要な点は、読者のコメントが記事に反映されているところ。

僕は最近マスメディアが「双方向のメディア」を目指そうとしてテレビの画面の端にツイートを流したり、新聞記事に対するコメントを募ったりしているのを見ていて、「これ双方向ではあるけどすれ違っているだけで全然交わってないから意味なくない?」と思っていたんだけど、本当に双方向性を目指すなら米国ハフィントン・ポストみたいに読者からの意見を記事に反映したりするべきなんじゃないかと。

それ以前にまず「双方向のメディア」を本当に目指すべきなの?という意見があると思うけど、結局どの情報やコメントを記事に反映するかはプロのジャーナリストたちの手腕にかかっている訳で、ロイ・シーコフさんはエディターとしてのプロジャーナリストの役割を強調していて、それは非常に共感する。

僕は何億人といる読者とメディアの中のプロジャーナリストの間で良い協力関係が築けて、それで情報が精査されて洗練されていくなら、皆ハッピーになれるんじゃないかなと思いました。

 

 

しかしこのシンポジウム、専用のハッシュタグなんかもあってパネルディスカッション中にTwitterで寄せられた質問に答えるという非常にインタラクティブなものだと聞いていたので、事前に朝日新聞のソーシャルメディアでの取り組みやMITメディアラボの研究などを結構調査して10個以上質問も用意していったのだが、結局全体で2つくらいしか質問に答えず、全くインタラクションのないものだった…

そしてプレゼンやパネルディスカッションの内容も、インターネットやソーシャルメディアが普及してボトムアップ型の民主主義が可能になった現状をポジティブな視点から概観したものと、未だビジョンでしかない未来予想図の発表で、その橋渡しとなる具体的な手法が全く見えてこなかったのがちょっと残念。

朝日新聞がMITメディアラボのテクノロジーを利用してこんな風に変わっていくよ!っていう内容だと思っていたんだけど、そんな話はひとつも出てこなかったし。

ただ、朝日新聞社コンテンツ事業本部長などを務めてきた大西弘美氏がMITメディアラボに一年間研究生として派遣されるようだし、社内にも「メディアラボ」を立ち上げるらしく、他新聞社と比べても朝日新聞は圧倒的にメディアのパラダイムシフトに対応しようとしているのは間違いない。

今後とも、朝日新聞の取り組みをずっと追っていきたいと思います。