ダウンロード刑罰化から1年、影響はどこに?

違法にアップされたコンテンツを、それと知っていながらダウンロードすると2年以下の懲役または200万円以下の罰金を課されるという、罪の割には超重たい罰則のダウンロード刑罰化が施行されてから、今月1日で1年が経った。

この法案の成立過程には「あまりにも拙速な審議」だとか「違法ダウンロード数=市場規模じゃないっしょ」とか「どこから違法になるのか線引きが曖昧すぎる」とか、当時から色々言われていたのだが、この前NHKが「違法ダウンロード刑事罰適用1年 売り上げ回復せず」と報じ(産経新聞より)、CDや音楽配信の売り上げはむしろ減少しているという残念な結果になっている。ネットの声は「知ってた」という意見が大半だ。僕も知ってた。

一方、実際にファイル共有ソフトの利用や違法ダウンロードが減っていることも事実だ(参考)。立法目的は達成したが、ロビイ活動に熱心だった音楽業界の思惑は達成できなかったようだ。

 

あと、ダウンロード罰則化の逮捕者はこの1年間未だに0だ。しかし、実は自首した悲惨な人が1人いる。彼はファイル共有ソフトのヘビーユーザーであり、いわゆる割れ廚だったのだが、捕まるのも時間の問題だと思ったので自首したという。しかし、なんと彼はファイル共有ソフトの設計上他者がダウンロードできる状態になっているファイルがあったので、「アップローダー」としては書類送検されたが、「ダウンローダー」としての書類送検は見送られた。警察もこの微妙な法律違反の扱いをどうしようか決めあぐねているらしい。彼の罪の意識は解消されたのだろうか。なんとも象徴的なできごとである。(参考)

 

さて、実はこの改正著作権法、附則第十条に「この法律の施行後一年を目途として、これらの規定の施行状況等を勘案し、検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講じられるものとする」とある。

音楽コンテンツの売り上げ減や、改正後の逮捕者が0という実情を踏まえ、どのような審議が為されるか。更に、現在TPP参加によって、違法ダウンロードが非親告罪化する可能性もあり、著作権保護期間延長などの議論も紛糾するだろう。

厳罰化の方向に進むのであれば、違法ダウンロードで3度警告を受けたユーザーのネット回線を1年間切断する「スリーストライク法」を採用したフランスのようになるか、はたまた大逆転が起きて、「必ずしもエンターテイメント業界が損失を被っているわけではない」という男らしい理由で非正規ダウンロードを合法化したスイスのようになるかもしれない。どちらにせよ注目していきたい。

 

まぁ掘れば掘るほど色々面白い問題が出てくるダウンロード罰則化であるが、僕が仮説として立てているのは、「ダウンロード罰則化で売り上げが下がるのはCDだけじゃなくて、ライブやフェス、物販もなんじゃないの?」ということ。

音楽業界のビジネスモデルは音源の売り上げではなくてライブや物販の収入にシフトしてきているというのは、最近よく言われていることだ。CDの売り上げはどんどん下がるのに、大型野外フェスの動員数はどんどん伸びているという。

これは、「CDは買わないけどYoutube見たり音源違法ダウンロードしてハマったからライブに行く」という層が結構いるということではないか。しかしネットコンテンツの利用をどんどん規制していくと、主要な収益源であるライブに来る人が減ってしまい、CD売り上げ減&ライブ収益源のダブルパンチになるのではないかというのが僕の懸念である。

先ほど挙げたスイスの例は、このような収益モデルの転換を織り込み済みだったからこそ、非正規ダウンロード合法化に踏み切ったのだと思われる。合理的な選択だ。

もう、CDも売れてライブも超満員、音楽業界ウハウハという時代でもない。業界の縮小を受け入れつつこの転換に乗り切れなければ、音楽業界はバッタバッタと倒れていくだろう。賢いアーティストは、個人でHP作るなりSNSで広報するなりうまくやる。

 

まぁしかし、違法ダウンロード自体はやっぱりよくないよ。なんてったってセコい。

しかし、いくら最高な音楽だって、タダで手に入るならタダて欲しいのが人間の性だ。結局、「音楽って無料だったら聴くけど、金払ってまで必要なくね?」ということである。音楽業界が身を引き締めて「音楽が売れない現実を重く受け止め、よりよいコンテンツを…」というのは、もちろん大事だけど少しお門違い。

そもそも芸術なんて、金持ちが趣味でパトロンになって応援して発展したものじゃないか。とかいう言説はかなり嫌いなんだけど、一理ある。

まぁ、なんかCD買ってアーティストを応援してあげるっていうのが実感としてないからなのかも知れないなぁ。それが分かりやすかったAKB48はそれなりに売れたわけだし。

とにかく、今後の審議では是非音楽コンテンツそのものじゃなくて、それ以外のライブ・物販の売り上げも考慮に入れつつ、合理的で納得のいく判断をして頂きたいものです。